悪性黒色腫

悪性黒色腫とは?

悪性黒色腫は皮膚にできる皮膚がんの一種で、色素細胞やほくろの細胞ががん化したものです。皮膚がんの中でも悪性度が高く、足の裏や胴体、顔、爪などさまざまな部位に発症します。まれに粘膜に発症することもあります。患者層は男性で60歳代、女性では70歳代が最も多く、白人に多い傾向にあります。
悪性黒色腫には「悪性黒子型黒色腫」「表在拡大型黒色腫」「結節型黒色腫」「末端黒子型黒色腫」の4つのタイプがあります。それぞれ性質が異なりますが、日本人にもっとも多いのが「末端黒子型黒色腫」と悪性度の高い「結節型黒色腫」です。
ほとんどのタイプは前駆症状※があります。しかし、結節型黒色腫に至っては、前触れがなく急速に成長します。がんが見つかったときには、すでに進行していることもありますので注意が必要です。

治療は手術で病巣を切除します。がん細胞が周囲組織に広がっている可能性が高く、範囲を広く取り、病巣から1~3㎝離して取り除きます。
術後5年生存率はステージⅠ期が98%。術後は再発予防のために抗がん剤治療や放射線治療、インターフェロン療法を行います。ステージⅢB期になると5年生存率が40%になり、リンパ節や肝臓、肺、骨、脳へ転移する可能性が高く、念入りな注意が必要です。

※がんを発症する手前の症状で、無治療の状態が続くと、やがて皮膚がんを発症すること。

種類

「悪性黒子型黒色腫」、「表在拡大型黒色腫」、「結節型黒色腫」、「末端黒子型黒色腫」の4つの種類に分類されています。
日本人にもっとも多いのが「末端黒子型黒色腫」と悪性度の高い「結節型黒色腫」です。

症状

悪性黒色腫にはタイプによりますが、皮膚にできる場合は、比較的早期発見が可能です。前駆症状とは、悪性黒色腫になる一歩手前の状態を言います。すなわち、褐色~黒褐色の色素斑や、皮膚の盛り上がり、しこりなどですが、次第に色が濃くなり、本格的に進行すると腫瘍や潰瘍ができます。また「結節型黒色腫」は前駆症状がなく、発症と同時に皮膚が褐色に盛り上がり、進行が進むにつれて濃黒色に変化していきます。また、日本人は体表以外に鼻腔、肛門腔内などにも比較的多く発症する傾向があり、これが「結節型黒色腫」であれば、更に臨床的に悪性度の高い流れに入ることになります。

原因

元来、白人の住処でなかったオーストラリアでの悪性黒色腫の罹患率の高さは有名ですが、従来から紫外線との関係が指摘されています。

生存率

5年生存率はステージⅠ期で98%、ステージⅡ期は84%、ステージⅢA期では61%、ステージⅢB期で40%、ステージⅣ期になると12%となります。

参考)
国立がんセンター中央病院2007年データ

再発転移

悪性黒色腫を放置すると、早期に所属リンパ節(最初に発生した部位から一番近いリンパ節)に転移することが多く、さらには肺、肝臓、脳など重要な臓器に転移してしまいます。悪性黒色腫は全身どこの臓器にも転移します。

治療

手術は、がん細胞が周囲組織に広がっている可能性を踏まえ、出来るだけ範囲を広くとり、病巣から1~3㎝ほど離して切り取るのが原則であり、更には周囲の関連リンパ節への転移の可能性も想定し、それらリンパ節も併せて切除します。手術後は抗がん剤や放射線治療、あるいはインターフェロンなどを使って再発防止に努めます。しかしながら、以上の治療を行っても、再発・転移の可能性は決して低くありません。
悪性黒色腫というがんは、免疫反応を起こしやすいがんであることはかなり以前からの通説であり、欧米でも腎臓がんと並び、幾多の免疫療法の臨床試験の際立ったターゲットとされて来ています。因みに、2013年末に米国で認可されたイビリマブ(抗CTLA4抗体)は、体内の免疫細胞の働きにブレーキを掛ける役割のタンパク質(CTLA4)の働きを抑制し、その結果として免疫力を高めようとする薬ですが、この薬の最初のターゲットは悪性黒色腫であり、この薬の効果は今までの悪性黒色腫の治療薬と比べれば、断然に高いことが臨床試験で証明されています。
 
当クリニックでもやはり、悪性黒色腫に対しては積極的に免疫治療を推し進めており、最近では新たに導入したがん抗原であるWT-1ペプチベータを用いる樹状細胞ワクチン療法を中心に添え、“BCG-CWS”なども加えることで濃厚な免疫治療を行っています。
尚、このBCG-CWSは30年前に大阪大学の免疫内科で開発され、最近になって再び注目を受けるようになり、当院を中心として臨床試験を開始している“免疫賦活薬”であり、体内の樹状細胞を活性化することでがんへの免疫力を底上げする働きがあります。