標準治療と免疫療法
標準治療としての抗がん剤治療や放射線治療、そして近年になって益々研究と開発が進みつつある分子標的薬は、各療法毎にがん細胞を駆除する為の働き方が異なるも、近年の遺伝子解析システムの助けもあり、様々な癌の治療に用いられるようになって来ています。更にこの数年前に登場した免疫チェックポイント阻害剤という免疫治療薬が同じく標準治療として参入して来たことで、患者さまの状況を見極めた上で、標準治療と免疫療法をバランス良く組み合わせて治療していくことがより大切となってきました。
手術と免疫療法
手術は、がんを取り除く上で、もっとも有効的な手段といえます。しかしながら、実際に手術で駆除できるのはCT、MRI、PETなどの画像検査、そして手術中に確認できる”目に見えるがん”だけであり、肉眼では確認できない極めて小さながん組織までを完全に取り除くことは現実として不可能です。従って、体内に残ったかもしれないがん細胞は、再び局所で増殖するか、血液やリンパ液とともに全身に流れていき、やがて肺や肝臓などの他臓器で増殖が始まり細胞の集合体ができると、再びがんが発症することになります。これが、がんの再発・転移です。
こうしたがんの再発・転移の予防の為、手術後の比較的に早い時期に予防の為の治療を行う方法があります。
抗がん剤、分子標的薬治療と免疫療法
抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える、あるいは死滅させる薬です。投与すると血液とともに体中に行き渡り、全身のがん細胞に作用します。効果があれば、短期間のうちにがん細胞を小さくすることができます。場所が特定できないがんにも効果が期待できる為、標準治療として再発予防にも用いられています。一方、骨髄抑制をはじめとする虚脱感や嘔吐、脱毛などの副作用を伴うので、却って、患者さまの病状を悪化させること場合があります。
一方、免疫細胞療法は抗癌剤と同様、全身に広がったがん細胞へ攻撃を仕掛けますが、抗がん剤治療で伴うような強い副作用はありません。しかしながら、抗がん剤治療で時にみられるような迅速な効果は期待し難いというのも事実です。従って、たとえば大きながんの場合、少々の副作用を覚悟の上で抗がん剤でこれを叩き、残りの弱り切ったがん細胞が再び勢いを盛り返さぬよう、免疫細胞療法でスイープしていくという方法が考えられます。また、分子標的薬は抗がん剤の様に免疫細胞を含めた骨髄で産生される細胞へダメージを与えることは少なく、従って、分子標的薬と免疫細胞療法の並行した治療が問題なく進めることが出来ます。
放射線治療と免疫療法
放射線治療は、がん細胞に放射線を照射して、がんの進行を抑制する療法です。
放射線治療によってがん細胞が破壊されると、大量のがん抗原(がんの目印)が体内に放出されることで、樹状細胞、T細胞などの免疫細胞がより活発に働き始め、特に樹状細胞によって活性の高まった大量のT細胞が、放射線が当たって直接に治療された場所以外での、がん細胞への攻撃、駆除が期待されます(abscopal effectと呼ばれています)。
免疫細胞を放射線治療に合わせて投与すると、より効果的にがん細胞にダメージを与えることが期待できます。