症例報告 ―肺がん(病理学的多型がん)
当クリニックでの症例報告 ―肺がん(病理学的多型がん)
抗がん剤治療では全く改善しなかった肺がんに対して、免疫療法を行うことで病巣が約50%縮小した例
- 患者さま:
- 70歳 男性
- 診断名:
- 肺がん(病理学的多型がん)
- 免疫療法:
- 樹状細胞ワクチン療法、活性化Tリンパ球療法
- 標準治療との併用:
- なし
- 免疫療法開始時期:
- 2012年6月
- 症例報告時期:
- 2012年12月現在
- 担当医師:
- 神戸ハーバーランド免疫療法クリニック 横川 潔
治療内容と経過
<治療までの経緯|抗がん剤治療と放射線治療を施行されるも反応せず>
2010年9月 | 38度前後の発熱、食欲低下があり、9月中旬に近医での胸部X-pで右肺がんを指摘され、大阪のがん専門病院を紹介されました。 |
2011年11月 ~2012年3月 | 3種の抗がん剤治療(カルボプラチンとタキソールを3コース、シスプラチンとアリムタを2コース、そしてタキソテールを3コース)を受けるも画像上では全く改善しなかった。 |
2012年5月 | 上大静脈への侵襲を防ぐ目的で45Gyの放射線治療が施行されています。 |
2012年6月 | 神戸ハーバーランド免疫療法クリニックを受診。 尚、がん専門病院からは、”緩和ケア”の為の病院を紹介されており、痛み(癌の病巣が右肺から肝臓を押し下げるように広がっており、特に右背中を中心にした鈍痛)などの対症治療のために通院中でした。 |
大きく減少していたリンパ球数を活性化Tリンパ球療法の実施で回復
末梢血データでは、免疫システムの兵隊とも云えるリンパ球数が正常値のほぼ10%にまで低下しており(特にTリンパ球、NK細胞数が低下していた一方、がん免疫力を低下させる制御性Tリンパ球数には低下が認められておらず)、まずは免疫システムの兵隊さんとも云えるリンパ球数を補う意味も含めて、2012年6月下旬から7月下旬まで毎週1回のペースで活性化Tリンパ球療法を施行したところ、リンパ球数が正常の約半分まで回復したのを確認しています。
巨大な肺がん病巣に対して樹状細胞ワクチンを直接投与
次に、肺がん病巣は巨大であり、まずはこれのがん細胞数を減少させる目的で、2012年8月上旬から10月上旬までに隔週で毎回約5×10^7個(5千万個)の樹状細胞ワクチンを計4回、腫瘍局部へ直接注入しました。この注入の手技自体は病巣が巨大サイズ故に困難でなく、患者さまご本人へ格別の負担を強いることなく施行されています。下図に示す如く、右肺病巣は約50%の縮小が認められました。 尚、2012年9月に入ってから呼吸機能の低下があり、9月下旬のCT検査で右肺の間質性肺炎が確認されたため、神戸ハーバーランド免疫療法クリニックでの免疫療法は休止しています。
患者さまより
活性化Tリンパ球療法を5回程行った頃より、それまで使用していた在宅酸素を外して日常生活を送れるようになったとの報告を受けました。また、調子の良い時には奥様と餃子を手作りし、おいしく食べることができた、など嬉しい報告もして下さっています。
担当医師から
当患者さまは正面から本疾患を捉え、病気から回復するためには如何なる試みに対しても積極的であり、特に当院で免疫療法を行うにおいては常に協力的姿勢を維持されています。ただ、来院当初からの右背部痛が頑固に続いており、また、病巣が随分と縮小しながらも、食欲不振が回復していないことが変わらぬ問題点です。
また、当院は本人の免疫細胞を用いる免疫療法を施行する場であり、従って患者さまご本人とは常に、”がんに負けず、これと上手に共存しよう”の姿勢で共に治療に当たることを心掛けています。本患者さまも常に、”良くなった”と私へ報告することを楽しみにされており、その意味では互いの信頼関係は充分に成立しています。後は、この肺がんの進行が停止し、当患者様が良好な生活の質を取り戻されることを切に望む次第です。